尚礼館では、沖縄剛柔流空手の型、空手本来の身体の動かし方や体づくりを通し、武道として心の成長、持ち方を説く。
渡口氏の著書には「空手の心」がある。まさに”空手は心の成長にあり”である。
■映画ベストキッドの脚本家も剛柔流の尚礼館所属
ベストキッド の師匠ミヤギ(右)
(c)ソニー・ピクチャーズ
映画ベストキッドは映画『トランスポーター』シリーズや、『96時間』の脚本家ロバート・マーク・ケイメン(72)が自身の半生を重ねて描いたものだ。
ケイメンは17歳の時、1964年のニューヨーク万国博覧会の後、いじめっ子のギャングに殴られたのをきっかけに自分の身を守るために空手を学び始めたが、そこは、軍隊のようにあまりにも戦闘的であったため、渡口氏が創設した剛柔流尚礼館のニューヨーク道場に出会い移籍した。
ベストキッドを観ると敵の道場「コブラ会」は、作者ロバートが最初に出会った道場がモチーフなのではと思えてしまう。
そして尚礼館で武道としての空手を練習し映画『ベストキッド』につながった。
渡口氏は1998年に81歳で他界したが、その前年の7月にMXテレビ「あなたの街から生中継」に出演し、ベストキッドの少年の師・ミヤギのモデルであることを明かした。空手は武道であり精神を鍛錬するものとも。
そして映画のクライマックスの両手を広げての鶴のポーズからの飛び蹴りだが、それは尚礼館で渡口氏が作った白鶴(はくつる)の型の一部であると語っている。
現在、東京・中野にある尚礼館本部の代表師範、飯嶋利夫氏に聞くと「映画制作にあたりロバートが来日して取材に来たと渡口先生から聞いている」と話す。
海外記事を調べるとロバートも師に会いに取材で日本に渡ったと話している。
渡口氏と話し、師の空手修行エピソードなども織り交ぜベストキッド3部作を完成させた。
ちなみにロバートの弟のロイ・ケネス・ケイメンも1965年から空手を始め、後に兄からの紹介でニューヨークの尚礼館に入門し黒帯を取得、現在も空手の稽古を続けている。
2017年に「KARATE-BENEATH THE SURFACE」を出版。
本を読んだ限り日本タイトルは「空手:表の剛と心の柔」「空手の奥義」といったところか。
本人のこれまでの空手修行と剛柔流空手の型、空手と精神について書かれている。
そこには「空手を学ぶ目的は戦い方を学ぶことだけではない。
一番は思いやりの心を身につけることだ。
真に思いやりのある人間になるためには、臆することのない姿勢が大切」という。
これは「日々生じる様々な問題から”逃げない”という強い気持ちや困難に耐える精神力」にも通じる。
空手の組手の試合では、恐れず一歩前へ、と言うことにもつながるだろう。
少年たちが強くなるために空手の門を叩き、渡口氏の弟子になり精神を磨き立派な大人に成長した。かつてのベストキッドたちの更なる活躍に期待したい。
文:吉倉拓児/取材協力:尚礼館総本部道場 (https://shoreikan-karate.com/)
2020年9月19日付けのイーファイト掲載記事より転載
(URL:https://efight.jp/news-20200919_465770)
MXテレビ 「あなたの街から生中継」
(URL:https://youtu.be/fEeQFJzZH2U)
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